エンジェルズ・ナイト(完結) 【クリスマス限定ラノベ?】

これは 「今」 だけの物語。クリスマスの夜、何かが起こるという噂が駆け巡る。それはよいことなのか?それとも悪いことなのか?噂は噂を呼び、その日を迎える。奇跡か?破滅か?その日、貴方は誰と、何を見ますか?

ライトなラノベ

(19)僕らの望む世界

 その時、大きな爆発音とともに街中の電気が次々に消えていった。ビルのウインドウ、ネオンサインも消えた。信号も消えたが、幸い、車は動いていなかったので惨事には至らなかった。
 非常用の明かりや車のライトなど、真っ暗闇というわけではなかったが、人々は途方にくれ周りを見渡し、携帯や、スマートフォンを取り出し、情報を得ようとしていた。しかし……いずれも、カーステレオのラジオさえもつながらず、静寂があたりをつつみこんだ。

 数十秒、いや、数秒だったろうか、ぽっかりと口をあけた静寂の闇の中、人々は我先に東京の外へ出ようと動き始めた。

 その頭上を今、ゆっくりとひとつの紙飛行機が滑空していく。
 さっきからずっと空をみあげている拓哉につられ、ユウトもキキも空を見上げると、キキが手を伸ばし、紙飛行機を掴んだ。

 瞬間

 ダッーーーーーーーーーーァァァアァァアアアアアンッーーー

 今度は明らかに空が割れるような音がして、フラッシュのような光が瞬いた。
 人々は空を見上げ、ついに、その奇跡を目撃した。

 そこには光の筋がくっきりと弧を描いていた。それは一瞬で消える流星などではなく、大きく黄金の尾を天に焼きつけていた。

「な、何だあれは」
「まるでサンタクロースがソリを引いているようじゃないか」
「いいや、天使の羽のようだ」

 それは本当にサンタクロースだったのか?はたまた天使だったのか?それとも消えたと思われていた彗星のかけらだったのか、わからないまましばらくするとやがて消えてしまった。

 しかしその時、人々はひとつ同じ想いを共有していた。
 立場や目的は違えど、ここにいる自分たちは、同じ、奇跡の中にいるのだと。
 そう、この宇宙に自分は一人ぼっちじゃないのだと感じたのだ。


 次の瞬間、電気が次々に、復活し、シャンデリアのような街灯りが灯っていった。
 そして、どこからともなくクリスマスソングが流れ出す。

 We wish you a merry christmas♪
 We wish you a merry christmas♪
 私達は願う、貴方のステキなクリスマスを
 Good tidings we bring to you and your kin
 良きことを貴方に、貴方の傍らに届けよう
 We wish you a merry christmas♪
 そうして私達は願う、貴方のステキなクリスマスを


「これも拓哉がやったのか?」

 いつの間にか戻ってきた日向刑事が拓哉に尋ねた。

「バカ言え、あんなこと出来るかよ!俺がやろうとしてたのは……せいぜい……ほら、始まった。あれくらいのことさ」

 見上げれば空にたくさんの飛行船が飛び立ち、たくさんの紙飛行機が飛び立っていった。サンタ・クルーザーから渡されたブラックライトに、その紙飛行機は照らされ、幻想的な……まるで天使のようだったという。



and HAPPY New Year♪
そして、また、来年?


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(18)プレゼント

「ユウト……ユウトよね?」

 屋外の階段にギターを抱えて座る少年がいた。

「君がキキかい?」

 声に振り返ると、そこには同い年くらいの少女がいた。ふたりはともに頷くと、それ以上言葉を発することなく、しばらく並んで座った。

「見晴らしは悪いけれど……綺麗な夜だな」
「ね、それ、弾いてよ」
「悪いな。俺、弾けないんだ。持ってるだけ」
「プッ あははははは」
「わ、笑うこたーないだろ!」
「だ、だって~~~」

「お二人さん、いい気なもんですね~」

 声がして振り返ると、そこには全身真っ黒なサンタクロースの姿があった。

「も、もしかして……あんたDか?」
「さあてね……だがしかし……、ここにふたつ薬があります。私からのプレゼントだ。どちらか選ばせてやるからそれを飲みたまえ」
「な、なんでそんなことをしなくちゃならねーんだよ!」
「フッ 契約ですよ。契約。まあ、飲まないというのならいいですよ。私は貴方達の本名も住所も知っているのですからね。なーに、ふたりともとは言ってないのですよ。片方はなん効果もない栄養剤だ。片方がゆき、片方は残れる。悪い取引じゃないと思いますがね」

「わ、分かったわ。わ、私飲む」
 キキはブラックサンタの手から薬を両方もぎ取ると、蓋をあけた。
「キ、キキ何をするんだ!」
「どちらか一方って約束よ?どうせ両方共毒なんでしょうけど、約束だからね!」
 キキがそれを飲もうとすると。

 パーーーーンッ

 乾いた銃声が響いた。

「あーあ……やっちゃった。また始末書だな。日向さん」
「うるせー緊急だろ」
「サンタ……クロース……?」

 そこには日向と拓哉の姿があった。

「ち 邪魔が入ったか、またな!」

 ブラックサンタが逃げようとすると、集まっていた他のクルーザーが道を塞いだ。

「逃げるな!ブラックサンタ!いいや楠瀬!」

 ブラックサンタはガクンッとうなだれた。

「なんでです?なんでわかったんですか?俺は、あんたらの前ではバカを演じてた。だからバレるはずなんて無いのに!」
「演じてただと?お前はやっぱバカなんだよ!大馬鹿もんだ!『シェオル』はお前が潜入調査していたサークルだろ。ミイラ取りがミイラになったのか、そもそもお前が立ち上げたのか知らんがな!だが、なぜだ?なぜそんなことを」
「俺はね……つくづくイヤになったんですよ。バカな子ども達のおもりがね!」
「そんな理由で……首都高まで爆破したのか!」
「首都高?知りませんね~そんなことは」
「あ~お取り込み中のところ……」
「なんだ拓哉!お前は黙ってろ!」
「いや、俺の仲間からさっき連絡が入って、首都高のは普通に事故だったらしいですよ」
「な、なにを!ええい!とにかく、逮捕だ!逮捕!おい!拓哉!お前はそこを動くな!あとで聞くことがあるからな!」

 日向は楠瀬に手錠をかけると最寄りの交番まで歩いて行った。赤いサンタが黒いサンタを逮捕した画像も、またたくまにネットに駆け巡った。

「ええと……僕らはどうすれば……」
 ユウトが拓哉に尋ねた。
「ん?好きにすればいいじゃねーの?あ、てかさ、ちょいとそのパソコンを貸してくれるか?あと始末はしておかなくちゃだからな日向さんも相変わらず抜けてるからなあ」
 キキから、パソコンを借りると、拓哉は『シェオル』の掲示板に打ち込んだ。

--今夜、空をみて考えよう。今のこと、明日のこと、自分のことを、再び--

「これでよしっと。じゃな、おっと、お前らにもこれをやるよ。あともう少ししたら、空を見上げるといい」

 ダッガーーーーーーーン!………

 その時、大きな爆発音がした。


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(17)ブラックサンタクロース


 ……ジ……ジジジ……

「拓哉さん、なんか妙な連中がいますよ」
 
 拓哉のもとに仲間の一人、ケースケから連絡が入った。

「おい~お前ら~なんだよ~その格好は真っ黒じゃないか?ブラックサンタか?え?あう、うわ~~~~!」

 ガッ ガガ ガガガ……

 しかし、連絡の途中で、雑音が入ると、その声は途切れてしまった。

「ケースケ!ケースケ!どうした?おい!応答しろよ!」

 ……ジジ……ガガガ……

「クリスマスは中止だと、言っただろう?」

 ケースケの携帯から、ケースケ以外の声がした。

「だ、誰だ、お前は!」
「ツー ツー ツー 」

「おい、ケースケはどこへ向かっていたんだ?」
「たしか……なんでしたか、爆破地点を抜け、皇居を通ってサンシャイン60へ向かうってさっき連絡が入ってましたけど……」

 グループ通話で会話していた仲間の一人が返した。

「どーします?集合かけますか?」
「……いや、いい。俺が行く。その他の者は予定通りだ。でも、ケースケの言ってたブラックサンタっての見つけても近づくなよ!」
「りょーかい!っす」

「おい!そこのサンタ!待て!」

 走りだそうとした拓哉達を呼び止める声がした。
 日向だ。車を捨て歩いていた日向が拓也達を見つけ、呼び止めたのだ。

「あんた誰です?」
「刑事だ!」

 日向は、非番のくせに持っていた警察手帳を見せた。

「日向さん……刑事ったって、少年課じゃないですか。今は」
「お前、拓哉か?今度は自転車か」
「お久しぶりです」

 拓哉はゆっくりと自転車を前にすすめ、帽子を外してみせた。

「おー、なら話が早い。爆破はお前の仕業か?」
「まさか!違いますよ!」
「だろーな。とりあえず、俺だって刑事だから聞いただけだ」
「でも、お前、何か知ってるだろ?」
「いや、たいして知らないですよ。ただ、仲間のひとりが事故ったらしいので、探しに行く途中です」
「ほーう……俺も連れて行け!」
「無理っす。自転車の二人乗りは禁止されてます。それに、この自転車乗るトコないし」
「刑事である俺がニケツなんてするわけねーだろ!そこの、お前!自転車を警察に供与せよ!」
「たっくん、どうします?」
「拓哉に聞くな!刑事である俺に聞け!」
「……まあ、いいだろう。悪いがお前は歩いて爆破箇所を見てきてくれるか?」
「了解っす」
「あ、だけど日向さん、これだけは譲れませんよ」

 そういうと拓哉は日向の頭に赤い帽子をかぶせ、赤い服を放り投げた。

「な、なんだこりゃ!」
「我らがサンタ号に乗るなら、それなりの格好じゃなきゃダメってことですよ」
「グッ」

 拓哉と日向、ふたりのサンタクロースはサンシャイン60にむかって走りだした。





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(16)コネクト


「なんだと!本当に爆破だと!」

 非番だった日向マコトの車はまさに都内で身動きが取れないでいた。陽子とも連絡がとれず焦った日向は、なんとか付近の警察署までたどり着くと、その場に車を置き、街へと歩き出した。

 ◆◆◆◆◆ 

--見よ!これが最後の審判だ!我らの旅立ちを祝う祝砲だ!--

 それぞれがすでに目的に向け出発してしまったあとなのか、参加者のいないコミュニティ『シェオル』内で管理者Dは語り続けていた。

--ユウト……怖い、怖いわ私……助けて……--

 しかし、パソコンを持ちだしていたキキは定期的にコミュニテイを覗いていた。

--キキさん……その発言は、裏切りということでしょうか?待っていなさい。貴方の位置は筒抜けです。今から迎えが貴方の元へ向かうでしょう……--

--させないさ。キキ、例の場所で落ち合おう--

 ユウトもスマートフォンでコミュニティを覗いていたのだ。

--それから『シェオル』のみんな、そして、Dさん、ボクとキキはこのコミュニティを拔けるよ。いずれにせよ、今夜を見守りたいんだ。今まで、どうもありがとう--

--ユウトさんまで……いいですか?このコミュニティは入る者は拒まずですが、決して辞めることなどできないのです。ユウトさん、辞めるというなら貴方も同罪、審判を受けるがいい!--

 ユウトとキキは、実際には面識がなかった。しかし、以前チャットの中で、自殺しようと忍びこんだが、途中管理人に見つかったビルがあり、なんと、ふたりともそのビルに忍びこもうとしたという話で盛り上がったことがあったのだ。だから、ユウトは、キキは、そこへ向かっていたのだった。
 しかし、管理者であるDはすべてのログを見ることができた……


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(15)エクスプロージョン


 ダァアーーーーーーーーーンッ!

 日没と同時に、首都高江戸橋ジャンクション付近に火の手が上がった。

「ああ~そういうことか!天空の樹と古き塔が交わるところって、スカイツリーと東京タワーの中間って意味だ」
 
 またしてもネットユーザーの推理力は高く、それが、第一の予告の実行であることをつきとめた。

「するってーと……次の予告も実行されるってこと?」
「ひゃっ東京爆死!良かった―俺、地方!」
「え?マジで?逃げ出したいんですけどぉ無理そ」

 ただでさえ交通量の増していた都内はパニックになり、車での移動は困難になっていた。電車は動いてはいたものの、犯人探しのための確認が各駅で、行われたため、事実上、首都は封鎖状態となった。


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(14)サンタ・クルーザー


「ちょっとハルこれ……」

 電車の中でスマートフォンを見ていたミカがハルに、ツイートされている画像を見せた。

「サンタ?ピザの配達?」

 そこには自転車に乗ったサンタクロースの写真があった。

「違うわみたいよ。ほら」

 タイムラインには、その他にもさまざまな画像があった。それは拓哉、もしくは拓哉の仲間たちの写真だった。拓哉は、今夜、自分と同じようにサンタの扮装をして、派手に輝く自転車で街を巡航するよう呼びかけたのだ。それに応えた人々が、各々にサンタクロースの格好をして自転車に乗って街にくりだしていた。

「ついにハッケーン!」
「てか、なんかショボ~~~」
「いたいたいた!信号待ちするサンタ・クルーザー!」
「これ三匹見ると幸せになれるんでしょ?」

 彼らの姿を目撃した人々が、twitterなどに写真をアップし、またたくまに広まっていった。誰が言い出したのか彼らのことをサンタ・クルーザーと呼ぶようになったのだ。

 ◆◆◆◆◆

「うわぁあ~~~、すご~~い人~~~」

 同じ頃、母親の見舞いをすませた翔太と奈美の兄妹も池袋の駅についた。

「私、ほとんど都心に出てこないから、何がなんだか分かんない。ね?お兄ちゃんは、そんなことないんだよね?スッゴーーーーイ!」

 純粋さ、とは時として厄介なものだと思うことが翔太にはよくある。今がまさにそうだ。高校卒業してから、ずっと地元で働いていた翔太にしたって都心に出てくることなど、ほとんどない。だから、緊張していたが、それを言うわけにはいかなくなってしまった。
 それだから、歩き出したものの、さてどうするか、と途方にくれていた。すると、目の前にサンタ・クルーザーがあらわれた。

「ホーホーホー! どこに行くのか決めかねてるのなら、コレをあげよう!ホーホーホー!」

 ちいさな袋を翔太に渡すと、そのサンタ・クルーザーはすぐに走り去ってしまった。
 その袋を開くと、東京☆飛ばせるスポット百選!と書かれた地図と、ブラックライト、線のひかれた白い紙が入っていた。

「なんだこれ?」

 そうは思ったものの、地図にサンシャインの文字をみつけると、小袋をポケットにつっこんで、サンシャインの方に歩き出した。

 陽が落ち始め、クリスマスイブ夜がだんだんと降りてきていた。


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(13)パレード


 とある東京都下、郊外の駅、ハルは待ち合わせよりずいぶんと早めに到着していた。

「お!マジ?なんだっけ……孫にも衣装だっけ?」
「バカ!それを言うなら馬子でしょ!」

 ハルが一瞬気づかないくらい、いつもとは違い、女らしいミカの姿がそこにはあった。

「てか、なに言わすのよ!そんなコト言うなら帰るわよ!」
「ウソ!ウソ!ウソ!たださ……」
「なによ!」
「綺麗だな……と、思って」
「もう!バカ!行くわよ!」
「ま、待てよー」

 ミカを先頭に、ふたりを乗せた電車は都心へと進んでいった。

「そいやあ、ドコ行くのよ?」
「ヒルズへ行って、夜景を見よう。スカイツリーと東京タワーが見えるらしいぜ」
「ふーん、まあ、イイわ」

 ◆◆◆◆◆

ーーねえ、ユウト……一緒に行きましょうよ……ーー
ーー『シェオル』では直接の接触は禁止だろ?現世に未練が残るからーー
ーーそう……よね……だから、死に場所も……じゃなかった、とぶ場所もそれぞれが、自分で選ぶ……そうだったわね……ーー
ーーああ、そうだ。でもさ、俺は前に話したビルに行くつもりさーー
ーーユウト……ーー

 ◆◆◆◆◆

「んで、たっくん。どんくらいの規模なんスか?」
「ん?」
「いや、そんな第三者的な顔して『ん?』じゃなくって、どんくらい人が集まるんスか?って聞いてんの!」
「そりゃ分からん。まー一人でも俺は構わないがな~」
「グッ 相変わらず……だなあ、たっくんは。ま、俺はついてきますけどね!でもさ……ちょい、ハズいんだよねえ~この格好が」
「お前、格好を気にするようなキャラだったか?」
「いや、キャラとかじゃなく……」
 
 ふたりはハンズで何やら買い込むとその足で自転車屋にいた。

「お、オッチャン、こいつぁあスペシャルだな!」
「おう拓哉。お前に頼まれちゃ仕方がねえさ。しかし、こんな変なものつけるなんて相変わらず……子供だなあ拓哉」
「大人か、子供か、なんて分かんないさ。毎日を楽しむ!ただ、それだけのことだ。さあ、パーティの始まりだ!」

 「それが子供だってんだ」とでも言いたげな、自転車屋の主人の目をよそに、拓哉と仲間のふたりの乗った自転車は街の中へと静かに滑りだしていった。周囲の人々は、そのふたりを呆気に取られたような顔で見ている。
 ふたりは、真っ赤なサンタクロースの格好であり、自転車も真っ赤であった。しかし、その自転車のスポークには、これでもか!というくらい光り輝く装飾がされ、走りだせば、タイヤ全体が光の輪のようだった。

 ◆◆◆◆◆

 皆が、それぞれの思惑で都市部に続々と集まっていった。


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(12)クロスワード


 爆破宣言のキーワードに関する見解は、ほとんどひとつのことを指していた

「天空の樹は間違いなくスカイツリーだな」
「古い塔は東京タワーだろ?」
「ふたつが交わるところってドコだ?」
「東京駅のちょい上らしいぜ」
「太陽の輝きって……アレじゃね?ほらスカイツリーが出来た頃騒がれた」
「あ、ああ~スカイツリーと、東京タワー、サンシャイン60……の正三角形か」
「じゃあ、目は……皇居か!」
「でも、閉じるってなんだ?」

 それは、天空の樹=スカイツリーであり、古き塔=東京タワー、太陽の輝き=サンシャイン60だ。これらを結ぶと、正確な正三角形になるという噂が、スカイツリーが完成するころしきりに話題にのぼっていたのだ。

 そして、最後の一文の解釈はその立場によって正反対だった。すなわち、「人間というのはそれぞれ、ただ独りの気高き存在である」というものと「この宇宙でそれぞれが、けして交わることのないひとりぼっちの存在である」というものだった。

 いずれにせよ、だんだんと、『今日はやはり、何かが起こる』そんな気配に包まれていった。



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(11)クリスマス中止のお知らせ

トゥルルルルル…… トゥルルルルル……

「ふあ?、何だ、いい天気じゃないか。こりゃあ、何か悪いことが起こる天気じゃないなあ」

 日向マコトは電話の音に目を覚ますとカーテン越しに外を見た。雲ひとつない青空だった。

「なに?爆破予告?」
「そ~なのよ?。だから今日は、遅くなっちゃうかも」

 電話の主は陽子だった。後ろの慌しい気配から警察署からだと分かる。

「たっく誰だよ!で?場所は?時間は?」
「それがさ……謎かけみたいなのよねえ……」

ーークリスマス中止のお知らせ
  天空の樹と古き塔が交わるところ
  また、太陽の輝きを結ぶ目が閉じる頃
  汝、再び知るであろう
  我らはただ、独りの存在であるとーー

「なんだそりゃ?」
「でしょ?ま、イタズラくさいけどねえ」
「何か手伝うか?」
「手伝うったって、少年課の私達なんて、いいトコ交通整理くらいでしょうから要らないわよ」
「そうだな。でも、ま、気をつけろよ」

 情報は公開されていないとはいえ、避難や交通規制のため一部関係者に伝えゆくため、その予告はたちまち、世間の知るところとなった。
 すると、ネットの住人により、その場所の予想が分析されていった。


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(10)贈り物


 ◆◆◆◆◆

「とりあえず、明日、放課後に駅前で」
「う、うん。わかったわ。時間は?」
「そうだなあ、五時くらいでいいか?」
「そう……じゃ、急がなくちゃね」
「ん?なにが?」
「ううん。こっちの話しよ。アンタが突然そんなこと言い出すから時間がないんじゃない!」
「へ?」
「いいの!じゃ、切るわよ!明日ね!」
「あ、ああ」

 ◆◆◆◆◆

--こちらはDだ。参加者は聞いてほしい。明日の夜、日没からちょうど二時間後、天空の塔をのぞむビルの屋上に集合だ。各自、いちばん大切なものを持ってくることとしよう。それを破壊することで、現実のしがらみからの決別の儀式とするのだ--

--大切なもの……なにかあるかな?ユウトはどう?--
--大切なものってのは、よくわからないけど思いつくのはひとつだ--
--なあに?--
--親の期待……かなあ、受験生には不要だって言われてしまい込んだギターとか--
--ふうぅん……。私は……なんだろ。特に思い出もないし……思い入れのあるものもないなあ。強いて言うなら、こうしてチャットをするためのPCかな。コレがなければこんな話にもならなかったのだし……。うん、これだわ--

 ◆◆◆◆◆

「それで?どんな具合だい?」
 拓哉はシャンデリアの街を見下ろすマンションの一室で仲間の一人に尋ねた。街の声を訊いているのだ。
「贈り物の交換、奇跡、天使、白とか、まあクリスマスにはありきたりなものが大半でした」「で?他にあったろう?こんだけ今年は騒がれてたんだから」
「はあ……あとは、空が落ちてくるとか、高い場所とか、破滅とか、なんとなく意味不明なモノがあるにはありましたねえ」
「プレゼントか……たしかに……」
「まあ、ありきたりですよねえ~」
「いや、いいかもしれないなあ」

 窓の外では、もうクリスマスまであと二日、夜もすっかりふけ、明日のイブを待つばかりの夜は一晩中輝き続けていた。

「よし、メッセージを流そう」
「メッセージですか?どんな?」
「贈り物だ。誰かのために、もちろん、恋人のためにでもいいが、贈り物を持ち寄ろうってメッセージだ。それはもちろん高価なものじゃなくてもしいし、そもそもモノじゃなくてもいい。たとえば言葉や歌なんかでもいいだろう。問題は誰かのためを思って自分が用意したモノってことだ。サッチンと高田君に頼めば、あっという間に広めてくれるだろうさ」
「ああ、たしかに、あのふたりなら、ネットはもとより。報道期間やら、怪しげな組織やらに瞬時に広めちまいますからねえ……」
 
 もし貴方が、今夜、奇跡を目にしたのなら、
 贈り物を大切な誰かに、もしくは許すべき隣人に与えよう。
 それが奇跡の輪となり、世界をつなぐだろう

 そんな、メッセージが一夜にして広まっていった。

「で、俺達は、なんでしたっけ?仮装でしたっけ?何時頃にします?」
「仮装じゃないだろ!が、でっかいケーキのロウソクが二本たった1時間後にスタートだ!」


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(9)彗星に願いを

「お、流れ星だ」
「おいおい、何を今更……」

 都市部を離れた山間にある天文台、外にある広場で研究員が空を見上げていた。冬は空気が澄んでいて星は見やすいが、12月も終わりに近づくと一際寒く、吐く息も白かった。

「まあ、こぐま座流星群だと、それほど盛り上がらないよなあ」
「でも、明日はラブジョイ再接近だろ?」
「今年はアイソンがなあ~」
「それは言わない約束だろ?」
「しかし、世紀の天体ショーとニュースでも話題だったからなあ……」
「これでまた人々が空を見上げなくなってしまうと思うと……」

 ラブジョイもアイソンも彗星の名前だ。アイソン彗星は大彗星になると予想されていたのに、太陽への再接近時に消滅したとされていた彗星だった。
 一方、ラブジョイ彗星というのは、名前の通りロマンチックにクリスマスをめがけて飛んでくる彗星……ではなくて、テリー・ラヴジョイという天文マニアによって発見された彗星である。
 彗星にしても、流れ星にしても、本当は星と呼ぶには小さすぎる岩や氷の塊である。だから彗星など接近するまで発見されないものも多い。しかし、それを見る者にとって、まさに星が降るようであり、その神秘に昔から人は心を震わされてきたのだ。
 そして、天文学に携わる者にとってはロマンだけでなく、経済的な効果も計り知れない。だから彗星への願いも誰よりも強かった。


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(8)ヴォイス

§ヴォイス1 ミカとハルと放課後に ーーー

「で?ドコに連れてってくるのかな?」

 放課後、いつもはハズカシイからと、一緒に帰ることのないミカがハルのもとへ駆け寄ってきた。

「え?何?」
「オイ!ばかハルト!あんたが昨日言ったんでしょ!クリスマスの日一緒にいたいって!」
「あ、ああ。そうか、そうだった」

 もちろんハルは忘れているハズは無かった。しかし、思い切っての告白の後の今だから、なんとなく、緊張してしまっていた。それを知ってか、知らずかミカはいつもどおり腕を掴んだりしてきて、その胸が当たるのだ。

「……あんた、やる気あるの?」
「や、ヤル気だなんて……」
「おーい!なに赤くなってんのよ!変な想像するんなら行かないからね!」
「ウソ!ウソ!ウソ!冗談だよ」

 ハルは自分でも顔が火のように熱くなっているのを感じ、腕を払うと一生懸命真面目な顔をしてみせた。

「な、なんかさ、ほら、街に出ようよ。ヒルズのライトアップを見てさ、表参道行ったりしてさ」
「まさか……ノープランじゃないでしょうね?」
「い、いやあ。だってほら、誰だっけ、あのタクヤさんだっけ?街中でパーティやるとか言ってるやつ。それを目撃できたら、いいかなあ、なんて思ってさ」
「……ノープラン……」
「いや、もうひとつ、とっておきのプランがあるからさ。期待しててよ!」
「期待しないで待つわよ」




§ヴォイス2 コミュニティ『シェオル』
 ーーー

--いいかい?羽根を持たない僕らが飛ぶためには位置エネルギーが必要なんだ。
より高く、より遠くへ飛ぶためには、より高い場所こそ有利ってわけさ
その前に、我々には大事な使命がある。より多くの同胞、仲間たちにこのことを知らせるんだ。君たちは一人じゃない……と--



§ヴォイス3 都心のとあるバーにて
 ーーー

「それでタッくん何をするんだ?そろそろ時間がないぜ?」
「うーん、そうだなあ~どうしよう?」
「え?こ、この期に及んで何も考えてないとか?」
「い、いやあ、言ってりゃなんとかなる!ってのが俺のポリシーだからなあ、とりあえず、なんかある。何かが起こる!って言ってみんなを集めりゃなんとかなるって」
「えーーーーー本当に?」
「俺を信じろ!」
「そ、それを言われると……よっし!じゃ、片っ端から声をかけて回りますよ!」
「よし、そーしてくれ。あと、声を集めてくれ、どんな小さなくだらなそうな声でもいい、そーいった積み重ねが世界を動かすんだからな」
「了解っす!」



§ヴォイス4 郊外のアパートメント
 ーーー

「お兄ちゃん、今年はさ、出かけようよ!」
「で、でも……」
「大丈夫!別に高いお店で食事とか言わないからさ!」
「お家でクリスマスも素敵だけど、街にでたら、街のデコレーションすべてが私達のモノになるのよ!素敵じゃない?」
「よ、よし。分かった。そうしよう。母さんの見舞いの後でな」
「うん!」



§ヴォイス5 アフター5の刑事
 ーーー

「まったく、マコトだけ非番じゃ、どーしようもないわね」

 マコトとは日向刑事のファーストネームだ。

「言うなよ陽子……さん?」
「もう!ふざけてないで!しょうがないでしょ!楠瀬君に見つかったら、たちまち署内に広まってどちらかが別の場所に飛ばされちゃうんだから!」
「ん、ああ。そうだったな。俺とお前が付き合ってるだなんて楠瀬のバカは気づきもしないだろうがな……」
「まあ、何もなければパトロールを早く切り上げて、いつものところで、ね?」
「ああ、本当に、何もないとイイがな」





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登場人物紹介

ここでは自分のメモ的に?登場人物の紹介をしていきます。


◯謎の男女
 XーDayを見下ろす、その正体は誰だろうか?

●ミカ
 高校生。ハルと幼なじみ

●ハル
 高校生。ミカと幼なじみ。ミカに告白しクリスマスをともに過ごすことに。

●管理者D
 自殺系?コミュニティ『シェオル』管理者。正体不明。

●キキ
 コミュニティ『シェオル』参加者、女、ユウトと知り合い。

●ユウト
 コミュニティ『シェオル』参加者、男、キキと知り合い。

◯『シェオル』の参加者たち
 数十名以上いると思われる

●三上拓哉
 生きる伝説。宿なし無一文ながら絶大な人気を持つカリスマ。
 TOKYO CITYに一大イベントを仕掛けようとしている?

◯拓哉の取り巻き
 強烈なカリスマである拓哉をに傾倒する者達


●翔太
 父が不在の中、妹を支える心優しき兄。推定20歳。年中貧乏であるが、それに負けない元気さを持っている。

●奈美
 翔太の妹の高校生。吹奏楽部。この歳にしては珍しいほどの純粋さを持っている。世界で一番兄が好き。


●楠瀬
 少年課の刑事

●日向真
 少年課の刑事、実は陽子と付き合っている。

●陽子
 少年課の刑事、職場では先輩だが真の恋人。

●ノイズ
 謎の声。人の世の否定的な心を集めた声とも呼ばれる。無意識意識の集合体?


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(7)ノイズ

「Xday、その日がチャンスだ。この噂の盛り上がりようじゃ、きっと誰もがそれを神々の審判だと思うさ」

 それが善意で始まるとしても、それが多くの人にとって幸せなことであっても、なにかのムーブメントが起こる時、そこにはいつか必ずノイズが混じるという。

「なーに大規模にやることはない。ちょっとだけ混ぜ込むだけでいいんだ」

 人間の性(さが)なのか、業(カルマ)なのか分からないが、そのノイズは、急激な変化が起きないようにする、人間の防御本能だという者もあった。

「奴らの希望が絶望に、信頼が疑いに変わるだけでいい。この世界にはまだまだ争いが必要なんだ。世界が発展し続けるためには争いこそが神が与えるもっとも有効な試練なんだよ」

 彼らは地下に流れる川のように、人知れず流れ、ちょっとしたトラブルで詰まり、滞留して大きくなってゆく闇そのものなのだ。
 彼らも密かに根を張り、その日を待っていた。何をしようとしているのか?その結果世界がどうなるのか?その参加者さえも知らなかった。


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(6)正義の見方

「日向先輩、信じてるんすか?」
「何をだ?」
「子どもたちの戯言ですよ。クリスマスの夜、何かが起こるって」

 夕方、暗くなりはじめた街の中をゆく私服刑事の姿があった。

「楠瀬、お前はバカか?」
「いえ、あ、はい。や~、俺ってバカっすか?」
「知るか!バカ!」

 年末年始は犯罪が増える。10代の若者が犯罪に巻き込まれるケースも多い。だから少年課の彼らは例年、パトロールを強化するのだ。

「いいか?噂など信じちゃ警察は務まらん。もし、仮にだ、何かが起こるとしたらそれは人間の手によるものだ。そして、それがもし法に触れるようなことなら、俺達が、いや俺が阻止する。ただ、それだけのことだ」

 二人はドラマでよくあるようなトレンチコートなどは着ておらず、日向は黒い革のジャケットだったし、楠瀬などラフなダウンにジーパン姿だった。

「さ、さすが日向先輩!言うことはカッコイイや!」
「お、おい!なんだ『言うことは』って!『は』じゃなくて『が』だろーが!」
「いやあ、だって先輩、その日、非番でしょ?」
「あ……」

「ふたりとも!フザケてないで次行くわよ!もう!私は用があるんだからね!」

 そこにもうひとり、ゲームセンターから出てきた女刑事がいた。彼女はOLのような格好だ。

「よ、陽子……さん、フザケてなんてないすよ」
「日向くん。気安く名前で呼ぶとセクハラで訴えるわよ。いいえ、即、逮捕するわよ」
「え、えーーーっ!」


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(5)小さき者達の幸せのサイズ


「サンタなんていねーんだよ!」
「翔太お兄ちゃん……」

 翔太は心の優しい青年である。四つ離れた妹のために、大学を中退し働きに出ていた。

「だって、そうだろ?本当にサンタが必要な貧しい家には来ねーんだからな!」

 景気がよくなったと言っても、それを実感している人間は少ない。とくに翔太のように会社を解雇されたばかりの人間にとっては、クリスマス一色に染まる街も人も、悪い冗談にしか見えなかった。

「嘘よ。だって、毎年サンタさん来てるじゃない。お父さんが居なくなってからも毎年……」
「そ、それは……」

 翔太は、妹の奈美が純粋であることを知っている。彼女の言うコトは、嘘だとか本当だとかではなく、どちらのほうが得か、損かでもない。ただただ信じるのだ。おそらく、兄である翔太の言うコトは、いや、翔太自身が自信が無くて、信じたいのに信じきれないものさえも、奈美は全力で信じるのだった。

「私、思うの。サンタクロースはやっぱいるんだって。そう信じてる人のところにだけ来るんだって。だから大人になるともう信じられなくなって、それだからサンタクロースは見えないんだって……」

 翔太の手には、もちろん今年もサンタクロースからのプレゼントが有った。クリスマス・イブの夜、妹の美奈の枕元に置かれることになるプレゼントだ。
 毎年、妹が本当にほしいであろうプレゼントが届かず、今年こそは!と思っていた矢先の解雇で、苛ついていたのだ。

「そ、そうだな。サンタはいる……か……」

 結局のところ、このふたりの兄妹はふたりで支えあって、くだらないように見える毎日の中に、限りなく大きな幸せを感じているのだった。


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(4)パーティ

「よーし、やったろうぜ!俺らでXdayを乗っ取ろう!」
「ああ、たっくんが言うなら間違いない」
「今年のクリスマスはかつてないモノになりそうだ!」

 人は平等だという。生まれ持った才能は大差ないのだと。しかし、大きくなるにつれ、ほとんどの人間はそれが嘘だと気づく。生まれながら持つ者と、持たざる者がいるのだと。
 ここに、望むべくすべてを持つ男がいた。三上拓哉だ。人は彼のその超人的な噂を聞くと、まず、嫉妬し、抗おうとするという。しかし、彼の前に立った時、彼の持つ才能に触れた時、彼に従うことに喜びを感じるようにさえなるという。
 彼は人が欲するであろうすべてを持っていた。背も高く、勉強もスポーツも万能であった。高校を卒業すると大学にも行かず始めた事業が世界的に受け入れられ、二十代で一生使いきれないであろう富を築いた。
 しかし、ある日突然、その地位も名誉も捨て去り、慈善組織に寄付してしまったのだ。そして、家も職も持たず流浪するようになった。
 それでも彼は以前と変わらず、いや、それ以上に幸せそうに笑いをふりまいた。彼のゆく先々で人々は我先に食べ物や寝る場所を提供したし、人が集まった。
 その拓哉が今年のクリスマス、いつのまにかXdayと呼ばれるようになったクリスマスに、東京中を巻きこんだパーティをやる、というのだ。

「これこそ奇跡だ!」
「このパーティに参加しない奴は一生後悔するだろう!」
「噂の真相はまさにコレだ!コレに違いない!」

 その噂は、他の噂を塗り替える勢いで広まっていった。



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(3)願望

--決めた……私も……とぶ--

 平日の昼だというのに、カーテンを閉めきった薄暗い室内で、パソコンのキーボードを打つ音が響いている。

--死んでしまうのかい?キキ--

 モニター画面上で、犬のアイコンがそう言った。

--そう……なのかなあ~分からないけど……一人じゃないし……ね?ユウト--
--ああ……俺もいくさ--

 黒ネコアイコンのキキが言うと、犬アイコンのユウトが答えた。

--希望をもって絶望の淵へとジャップするというのか……面白い--

 キキの部屋よりもさらに暗く、真夜中の闇のような空間の中で、ニヤリと笑う口元がモニターの光に浮かんでいる。ドクロのアイコン、つまりこのコミュニティ『シェオル』の管理人Dだ。

--ボクも参加します--
--私もいいですか?--
--ひとりじゃ……ない……もの……--

 すると続々と賛同の声が、いや言葉が続いた。

--忘れてはいけないよ。Xday、ボクらは逃げ出すのではない。次のステージへ行くんだ--

 懸命に生きようとする者がいる。もしくは、なんとなく生きていようとする者がいる。それが正常だと多くの人は言う。しかし同時に、なんとなく死んでみようと思う者もいるのだ。
 えてして『生きたがり』は『死にたがり』を蔑み、『死にたがり』は『生きたがり』を妬みながらも死にきれず、居心地の悪い生をなんとなく過ごすしか無かった。『シェオル』は、そんななんとなくの『死にたがり』の受け皿であった。それが今、Xdayの噂に呼応し、積極的な集団行動に出ようとしていた。


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(2)ミカとハル

「おい、ミカ。クリスマスどうするんだよ?」
「何がよ?」

 それはよくある登校風景のひとコマだった。

「世界が滅びるんだろ?」

 ふたりは朝、駅から高校への道を歩き始めていた。

「は?ハル、アンタもそんな話を信じてるの?踊らにゃ損々派だっけ?」
「い、いや、だってさ、昨日のテレビでもやってたぜ?『その時、あなたはどうする?』ってさ」

 この手の噂や都市伝説というのは、若ければ若いほど影響を受けやすい。そして、若者ほど破滅の噂を信じる傾向が強かった。快活そうなミカにしたって、部屋の整理をしたり、遺書めいた日記を書いていたりするのだ。

「で?アンタはその時、どうしようって思ったの?」

 ハルは歩きゆく道の遥か彼方を、しばらく見つめたあと、ミカをふりかえった。
「……ミカ……俺はオマエと一緒にいたい」

 沈黙が生まれた。ハルは、歩くたびにきしむ靴のかかとの音が、今日はやけにうるさく感じた。そして、ミカの制服のスカートがすれる音さえ聞こえるようだった。

「フン 便乗告白ってワケ?」
 ミカはハルの方を見ることもなくつぶやいた。

「い、いや……そーかもしれないけど……でも……イヤか?俺とじゃ」

 すべての人類が、同じ一秒一秒の積み重ねで明日へと向かている。
 しかし、その時のハルの一秒は、何十秒にも、何分にも感じた。

「ううん……イイわ」

 ミカはゆっくりと目を閉じ、うなづいた。

「え?」
「パーティの予定だったけど、イイわって言ったのよ!」

 ミカは駆け出した。口元には微笑みが浮かんでいた。

「お、おい!待てよー」

 学校に近づくにしたがって集まりだした生徒達の群れに、ふたりは紛れ込んでいった。


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(1)白い噂

 遡ること一ヶ月前、若者を中心に奇妙な噂が広まっていた。

「な、あの噂知ってるか?」
「な~に?噂って」
「ほら、12月の25日」
「へ?クリスマス?」
「あ、ああ、そうだ。そうだった。クリスマスだったな」
「その日、奇跡が起きるらしい」

「ね!聞いた?クリスマスの夜」
「おーおー!聞いた聞いた。世界が終わるんだろ?」
「え?変わるって聞いたよ?」

「信じる者は救われ神の国に入り、信じぬ者は残される……」
「死者が蘇るって?」
「なんかさーお金が降ってくるんだってー」
「てか、なんで今年なワケ?別に世紀末でも何でもないのに」
「どうせどこかの宣伝かなにかだろ?」

 噂は支離滅裂でまとまりがなかったが、退屈ゆえか、破滅願望か、人々の意識を刺激しネットやSNSを使って、またたく間に広がっていった。
 そうして今年のクリスマスには、何かは必ず起こる。そう人々は信じるようになっていった。良いことか、悪いことかは分からないが。


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(0)はじまりの終わり

「ね、コレあげる」
「ん?なんで?コレ、大切にしてたやつだろ?」
「だって、ほら、もう時間じゃない」
「あ、ああ……そうか。そうだな。すべてはこの夜のために……」

 男は女の肩を抱き寄せ、空を見上げた。
 都市のビルの上、ゆるやかに黄金の月が登ると
 重なりあう二人の影を焼き付けた。

 男の手から、いつの間に折ったのか紙飛行機が夜空に放たれた。
 闇の中、音もなく紙飛行機は滑空する。
 空を見上げることなく進む人々の群れは、紙飛行機には気づかない。
 紙飛行機はすぅーーーっと進み、群衆の頭すれすれまで降りてきた。
 すると、スッと手が伸び、紙飛行機を掴んだ。

 その瞬間……

 ダッーーーーーーーーーーァァァアァァアアアアアンッーーー

 激しい閃光と爆発音が辺りを包み、人々はやっと空を見上げた。
 舞い上がるチリがまるで雪のように降りそそぐ。

 その時、みつけたものは奇跡だったのか、幸運だったのか、それとも絶望だったのか……
 人々はひとりで、もしくは愛しい人と、その夜をいつまでも見上げていた……



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作者からひとこと
このお話はブログで展開する「ライトなラノベ」という性質上一本一本が短い章に分かれています。
もし、続けて読みたい、という方は下記より御覧ください。

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