その時、大きな爆発音とともに街中の電気が次々に消えていった。ビルのウインドウ、ネオンサインも消えた。信号も消えたが、幸い、車は動いていなかったので惨事には至らなかった。
 非常用の明かりや車のライトなど、真っ暗闇というわけではなかったが、人々は途方にくれ周りを見渡し、携帯や、スマートフォンを取り出し、情報を得ようとしていた。しかし……いずれも、カーステレオのラジオさえもつながらず、静寂があたりをつつみこんだ。

 数十秒、いや、数秒だったろうか、ぽっかりと口をあけた静寂の闇の中、人々は我先に東京の外へ出ようと動き始めた。

 その頭上を今、ゆっくりとひとつの紙飛行機が滑空していく。
 さっきからずっと空をみあげている拓哉につられ、ユウトもキキも空を見上げると、キキが手を伸ばし、紙飛行機を掴んだ。

 瞬間

 ダッーーーーーーーーーーァァァアァァアアアアアンッーーー

 今度は明らかに空が割れるような音がして、フラッシュのような光が瞬いた。
 人々は空を見上げ、ついに、その奇跡を目撃した。

 そこには光の筋がくっきりと弧を描いていた。それは一瞬で消える流星などではなく、大きく黄金の尾を天に焼きつけていた。

「な、何だあれは」
「まるでサンタクロースがソリを引いているようじゃないか」
「いいや、天使の羽のようだ」

 それは本当にサンタクロースだったのか?はたまた天使だったのか?それとも消えたと思われていた彗星のかけらだったのか、わからないまましばらくするとやがて消えてしまった。

 しかしその時、人々はひとつ同じ想いを共有していた。
 立場や目的は違えど、ここにいる自分たちは、同じ、奇跡の中にいるのだと。
 そう、この宇宙に自分は一人ぼっちじゃないのだと感じたのだ。


 次の瞬間、電気が次々に、復活し、シャンデリアのような街灯りが灯っていった。
 そして、どこからともなくクリスマスソングが流れ出す。

 We wish you a merry christmas♪
 We wish you a merry christmas♪
 私達は願う、貴方のステキなクリスマスを
 Good tidings we bring to you and your kin
 良きことを貴方に、貴方の傍らに届けよう
 We wish you a merry christmas♪
 そうして私達は願う、貴方のステキなクリスマスを


「これも拓哉がやったのか?」

 いつの間にか戻ってきた日向刑事が拓哉に尋ねた。

「バカ言え、あんなこと出来るかよ!俺がやろうとしてたのは……せいぜい……ほら、始まった。あれくらいのことさ」

 見上げれば空にたくさんの飛行船が飛び立ち、たくさんの紙飛行機が飛び立っていった。サンタ・クルーザーから渡されたブラックライトに、その紙飛行機は照らされ、幻想的な……まるで天使のようだったという。



and HAPPY New Year♪
そして、また、来年?


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