「ユウト……ユウトよね?」

 屋外の階段にギターを抱えて座る少年がいた。

「君がキキかい?」

 声に振り返ると、そこには同い年くらいの少女がいた。ふたりはともに頷くと、それ以上言葉を発することなく、しばらく並んで座った。

「見晴らしは悪いけれど……綺麗な夜だな」
「ね、それ、弾いてよ」
「悪いな。俺、弾けないんだ。持ってるだけ」
「プッ あははははは」
「わ、笑うこたーないだろ!」
「だ、だって~~~」

「お二人さん、いい気なもんですね~」

 声がして振り返ると、そこには全身真っ黒なサンタクロースの姿があった。

「も、もしかして……あんたDか?」
「さあてね……だがしかし……、ここにふたつ薬があります。私からのプレゼントだ。どちらか選ばせてやるからそれを飲みたまえ」
「な、なんでそんなことをしなくちゃならねーんだよ!」
「フッ 契約ですよ。契約。まあ、飲まないというのならいいですよ。私は貴方達の本名も住所も知っているのですからね。なーに、ふたりともとは言ってないのですよ。片方はなん効果もない栄養剤だ。片方がゆき、片方は残れる。悪い取引じゃないと思いますがね」

「わ、分かったわ。わ、私飲む」
 キキはブラックサンタの手から薬を両方もぎ取ると、蓋をあけた。
「キ、キキ何をするんだ!」
「どちらか一方って約束よ?どうせ両方共毒なんでしょうけど、約束だからね!」
 キキがそれを飲もうとすると。

 パーーーーンッ

 乾いた銃声が響いた。

「あーあ……やっちゃった。また始末書だな。日向さん」
「うるせー緊急だろ」
「サンタ……クロース……?」

 そこには日向と拓哉の姿があった。

「ち 邪魔が入ったか、またな!」

 ブラックサンタが逃げようとすると、集まっていた他のクルーザーが道を塞いだ。

「逃げるな!ブラックサンタ!いいや楠瀬!」

 ブラックサンタはガクンッとうなだれた。

「なんでです?なんでわかったんですか?俺は、あんたらの前ではバカを演じてた。だからバレるはずなんて無いのに!」
「演じてただと?お前はやっぱバカなんだよ!大馬鹿もんだ!『シェオル』はお前が潜入調査していたサークルだろ。ミイラ取りがミイラになったのか、そもそもお前が立ち上げたのか知らんがな!だが、なぜだ?なぜそんなことを」
「俺はね……つくづくイヤになったんですよ。バカな子ども達のおもりがね!」
「そんな理由で……首都高まで爆破したのか!」
「首都高?知りませんね~そんなことは」
「あ~お取り込み中のところ……」
「なんだ拓哉!お前は黙ってろ!」
「いや、俺の仲間からさっき連絡が入って、首都高のは普通に事故だったらしいですよ」
「な、なにを!ええい!とにかく、逮捕だ!逮捕!おい!拓哉!お前はそこを動くな!あとで聞くことがあるからな!」

 日向は楠瀬に手錠をかけると最寄りの交番まで歩いて行った。赤いサンタが黒いサンタを逮捕した画像も、またたくまにネットに駆け巡った。

「ええと……僕らはどうすれば……」
 ユウトが拓哉に尋ねた。
「ん?好きにすればいいじゃねーの?あ、てかさ、ちょいとそのパソコンを貸してくれるか?あと始末はしておかなくちゃだからな日向さんも相変わらず抜けてるからなあ」
 キキから、パソコンを借りると、拓哉は『シェオル』の掲示板に打ち込んだ。

--今夜、空をみて考えよう。今のこと、明日のこと、自分のことを、再び--

「これでよしっと。じゃな、おっと、お前らにもこれをやるよ。あともう少ししたら、空を見上げるといい」

 ダッガーーーーーーーン!………

 その時、大きな爆発音がした。


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