◆◆◆◆◆

「とりあえず、明日、放課後に駅前で」
「う、うん。わかったわ。時間は?」
「そうだなあ、五時くらいでいいか?」
「そう……じゃ、急がなくちゃね」
「ん?なにが?」
「ううん。こっちの話しよ。アンタが突然そんなこと言い出すから時間がないんじゃない!」
「へ?」
「いいの!じゃ、切るわよ!明日ね!」
「あ、ああ」

 ◆◆◆◆◆

--こちらはDだ。参加者は聞いてほしい。明日の夜、日没からちょうど二時間後、天空の塔をのぞむビルの屋上に集合だ。各自、いちばん大切なものを持ってくることとしよう。それを破壊することで、現実のしがらみからの決別の儀式とするのだ--

--大切なもの……なにかあるかな?ユウトはどう?--
--大切なものってのは、よくわからないけど思いつくのはひとつだ--
--なあに?--
--親の期待……かなあ、受験生には不要だって言われてしまい込んだギターとか--
--ふうぅん……。私は……なんだろ。特に思い出もないし……思い入れのあるものもないなあ。強いて言うなら、こうしてチャットをするためのPCかな。コレがなければこんな話にもならなかったのだし……。うん、これだわ--

 ◆◆◆◆◆

「それで?どんな具合だい?」
 拓哉はシャンデリアの街を見下ろすマンションの一室で仲間の一人に尋ねた。街の声を訊いているのだ。
「贈り物の交換、奇跡、天使、白とか、まあクリスマスにはありきたりなものが大半でした」「で?他にあったろう?こんだけ今年は騒がれてたんだから」
「はあ……あとは、空が落ちてくるとか、高い場所とか、破滅とか、なんとなく意味不明なモノがあるにはありましたねえ」
「プレゼントか……たしかに……」
「まあ、ありきたりですよねえ~」
「いや、いいかもしれないなあ」

 窓の外では、もうクリスマスまであと二日、夜もすっかりふけ、明日のイブを待つばかりの夜は一晩中輝き続けていた。

「よし、メッセージを流そう」
「メッセージですか?どんな?」
「贈り物だ。誰かのために、もちろん、恋人のためにでもいいが、贈り物を持ち寄ろうってメッセージだ。それはもちろん高価なものじゃなくてもしいし、そもそもモノじゃなくてもいい。たとえば言葉や歌なんかでもいいだろう。問題は誰かのためを思って自分が用意したモノってことだ。サッチンと高田君に頼めば、あっという間に広めてくれるだろうさ」
「ああ、たしかに、あのふたりなら、ネットはもとより。報道期間やら、怪しげな組織やらに瞬時に広めちまいますからねえ……」
 
 もし貴方が、今夜、奇跡を目にしたのなら、
 贈り物を大切な誰かに、もしくは許すべき隣人に与えよう。
 それが奇跡の輪となり、世界をつなぐだろう

 そんな、メッセージが一夜にして広まっていった。

「で、俺達は、なんでしたっけ?仮装でしたっけ?何時頃にします?」
「仮装じゃないだろ!が、でっかいケーキのロウソクが二本たった1時間後にスタートだ!」


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