「お、流れ星だ」
「おいおい、何を今更……」

 都市部を離れた山間にある天文台、外にある広場で研究員が空を見上げていた。冬は空気が澄んでいて星は見やすいが、12月も終わりに近づくと一際寒く、吐く息も白かった。

「まあ、こぐま座流星群だと、それほど盛り上がらないよなあ」
「でも、明日はラブジョイ再接近だろ?」
「今年はアイソンがなあ~」
「それは言わない約束だろ?」
「しかし、世紀の天体ショーとニュースでも話題だったからなあ……」
「これでまた人々が空を見上げなくなってしまうと思うと……」

 ラブジョイもアイソンも彗星の名前だ。アイソン彗星は大彗星になると予想されていたのに、太陽への再接近時に消滅したとされていた彗星だった。
 一方、ラブジョイ彗星というのは、名前の通りロマンチックにクリスマスをめがけて飛んでくる彗星……ではなくて、テリー・ラヴジョイという天文マニアによって発見された彗星である。
 彗星にしても、流れ星にしても、本当は星と呼ぶには小さすぎる岩や氷の塊である。だから彗星など接近するまで発見されないものも多い。しかし、それを見る者にとって、まさに星が降るようであり、その神秘に昔から人は心を震わされてきたのだ。
 そして、天文学に携わる者にとってはロマンだけでなく、経済的な効果も計り知れない。だから彗星への願いも誰よりも強かった。


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