「日向先輩、信じてるんすか?」
「何をだ?」
「子どもたちの戯言ですよ。クリスマスの夜、何かが起こるって」

 夕方、暗くなりはじめた街の中をゆく私服刑事の姿があった。

「楠瀬、お前はバカか?」
「いえ、あ、はい。や~、俺ってバカっすか?」
「知るか!バカ!」

 年末年始は犯罪が増える。10代の若者が犯罪に巻き込まれるケースも多い。だから少年課の彼らは例年、パトロールを強化するのだ。

「いいか?噂など信じちゃ警察は務まらん。もし、仮にだ、何かが起こるとしたらそれは人間の手によるものだ。そして、それがもし法に触れるようなことなら、俺達が、いや俺が阻止する。ただ、それだけのことだ」

 二人はドラマでよくあるようなトレンチコートなどは着ておらず、日向は黒い革のジャケットだったし、楠瀬などラフなダウンにジーパン姿だった。

「さ、さすが日向先輩!言うことはカッコイイや!」
「お、おい!なんだ『言うことは』って!『は』じゃなくて『が』だろーが!」
「いやあ、だって先輩、その日、非番でしょ?」
「あ……」

「ふたりとも!フザケてないで次行くわよ!もう!私は用があるんだからね!」

 そこにもうひとり、ゲームセンターから出てきた女刑事がいた。彼女はOLのような格好だ。

「よ、陽子……さん、フザケてなんてないすよ」
「日向くん。気安く名前で呼ぶとセクハラで訴えるわよ。いいえ、即、逮捕するわよ」
「え、えーーーっ!」


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